サルワタリ・アトリエ 一級建築士事務所

シークエンスを楽しむ家 秋田市H邸

既存外観 玄関風除室 玄関 玄関 玄関ホール 玄関ホール 居間と食堂 NO IMAGE

この建物は築27年目にして、祖父の代から孫の代へと住み継ぐために行われた改修工事である。計画にあたり断熱改修という地域特性の命題のもと、耐震改修は勿論、特殊だったのは日本家屋固有の外観はそのままに、内装のみ和風とは異なる造りで更新する事を要望された。ややもするとちぐはぐなイメージに陥りやすい建築タイプである。更に規模が比較的大きく、本来なら予算、家族関係、諸事情により、新しい土地に新たに住まいを建てるという考えに及ぶものであるが、施主は祖父の代に建てられた住まいを更新し、住み続けたいと熱弁した。同時に、既存材料を産廃処分するのではなく、極力使って欲しいとの要望も提出された。施主の「物」を大切にする哲学がここに現れている。そもそも住宅とは家族の、更には地域の記憶装置みたいなものであると僕は思っている。建物を構成する材料全てに渡り、日常の記憶が蓄積され浸透されているものだ。それらがその地域独自の固有の風景をつくりだしていると考えられる。使用されている材料を調査し、吟味してみた。興味深いのは黒檀で造られた階段だった。これを挽き直し、再度階段の踏み板として新たな生命を吹き込んだ。また、外観は建設当時のままに修復するため、真壁構造の特性上、耐震、断熱改修ともに特殊解が要求されたのだった。結論として、内断熱を施した上に気密層を取り、構造用合板で強度を付加させるという工法を取った。断熱気密化させ、電化住宅仕様として再生させたのである。要望通り、外と内が性格の違う趣きとなるが、その狭間を埋めるため、新たに風除室の機能を付加させた木の箱を玄関に挿入した。この木の箱に、日本家屋の外観から異質な内部空間へと導くためのフィルターとしての役目を担わせている。つまり、祖父世代で造られた外観と孫世代で造られた内部との調停役として、唯一外部に変化をもたらしたこの箱が、世代間の橋渡しとなってくれるシンボルである。

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